東京地方裁判所 昭和44年(ワ)8780号 判決
以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。
〔判決理由〕一、原告は第一回入院直後四日間は一種の放心状態に陥つていたこと、第一回入院中は看護婦による付添看護がなされたが、原告の妻は、第二回目の際も含め全期間付添つて看護しており、そのため必要な費用は原告が負担していること、原告自宅より京橋病院迄公共の交通機関による運賃は片道金一七〇円であること、第一回退院時原告は金五四〇円のタクシー料金を支出していること、第一回退院の際、京橋病院側としては爾後の治療は自宅における静養を中心に考えており、同病院への通院は指示しておらず、必要に応じ近隣の医師の治療を受けることで足りると考えていたこと、などが認められ、右認定を左右するに足りる証拠はない。
右認定事実と(二)の認定をあわせ検討すると、原告の第一回退院の際のタクシー代金五四〇円ならびに、たとえ付添看護婦がいたとしても、放心状態に陥つている夫のため妻が付添看護するのは不必要なものとみることは許されず、そのため原告が出費せざるをえなかつた、第一日目のタクシー代相当金五四〇円と、その後昭和四三年四月一五日迄の公共用交通機関運賃相当金一、一九〇円、ならびに、退院する原告に付添うため病院に赴く交通費金一七〇円の総合計金二、四四〇円は、被告において原告に賠償するのが相当である。
しかし、その後、原告が放心状態より脱出した期間についてまで、付添看護婦のほか、妻の付添を必要とする特段の事情の認められない本件において、前同月一六日より同月二一日迄の交通費を被告に賠償させることは相当でない。また、前認定のとおり、第二回目の入院それ自体は、本件事故のため必要となつたわけでなく、肺炎発病の事態さえなければ、第一回退院後は、自宅療養と、近隣の医師の治療をもって足りていた本件において、二回入院に関する交通費を被告に負担させるのも相当でないこと明らかである。
二、飼犬飼育委託費 金二、二四六円
<証拠>によると、原告は妻と二人きりで家庭生活を続け飼犬を愛玩飼育していたこと、および原告の入院期間中右、飼育犬を日本動物愛護協会に飼育委託し、料金として昭和四三年四月一二日より同月二四日迄分として金七、三〇〇円を支払つていることが認められ右認定に反する証拠はない。
そうすると、前記認定に従い、本件事故のため入院を余儀なくされ、そして妻の付添看護が相当とされる昭和四三年四月一二日より同月一五日迄の間の飼犬飼育委託は、右認定の原告の生活環境からみて、本件事故により通常蒙る範囲内の損害とみて差支えないから、この委託相当金二、二四六円は被告において賠償すべきであるが、その後の飼育委託費の賠償は相当でない。(谷川克)